精密根管治療について
歯の根の治療(根管治療)は、
難易度の高い治療です
むし歯が進行してしまい、歯の根(根管)の奥深くや神経まで菌が感染してしまっている場合は、根管治療を行いますが、この根管治療がおろそかになってしまうと、痛みや腫れを引き起こしたり、治療が長引いたり、再治療となってしまうことがあります。
根管は患者さんによって大きく異なり、複雑な形状をしています。さらに、狭く入り組んでいるため、高度な技術と適切な診断がとても大切です。
こんな場合はご相談ください
- できるだけ歯を抜きたくない
- 長く歯を残したい
- 歯の根の治療を繰り返している
- 神経を取る必要があると言われた
- 根管治療がなかなか終わらない
当院の精密根管治療
治療時間の確保
歯は治療を繰り返せば繰り返すほど脆くなり、治療の難易度は上がってしまいます。
当院ではできるだけ少ない回数で治療を終えることができるよう、1回の治療時間を60~120分とし、十分な治療時間を確保しています。
歯科用CT
歯科用CTによるレントゲン撮影では、患部を三次元的に立体画像で確認することができます。それにより、患者さんごとに異なる歯根の数や方向、神経の位置などをしっかりと把握することが可能です。
マイクロスコープ
マイクロスコープは、肉眼の25倍程拡大することができます。
根管内を明るく照らし、患部をしっかりと確認することで、感染してしまった神経や血管を取り除きます。
ラバーダム防湿
お口の中には多くの細菌が存在します。唾液や血液などが患部に付着して細菌感染しないよう、処置を行う歯以外をすべてゴムのシートで覆う「ラバーダム防湿」を行い、成功率の高い根管治療の実現に努めています。
ニッケルチタンファイル
根管内を綺麗にする際には、ファイルと呼ばれる器具を使用します。
素材がニッケルチタンのファイルは柔軟性があり、複雑な根管内の追従に向いています。その他にも、破折のリスクが低いなどのメリットがあります。
MTAセメント
MTAセメントとは、ケイ酸カルシウムを主成分としています。生体親和性に優れ、周囲の細胞を再活性させるだけでなく、殺菌作用もあります。
このMTAセメントを、むし歯を除去した後に詰めることで、神経を保存できる場合があります(歯髄温存療法)。
根管治療の真実
治療方法により成功率が
大きく異なります
根管治療の目的は「痛みを取り除く」ことだけではなく、「根尖性歯周炎の予防と治療」です。
その目的のために必要となるのが「無菌的処置」「適切な根管形成と根管洗浄」「緊密な根管充填と封鎖」です。
これらの処置が正しく行われることで、高い成功率を達成することが出来ます。この「成功率」とは症状がないこと、レントゲン上にて根尖部の透過像の縮小がみられることであり、治療後にこの2つが成立して「成功した」と言えます。それでは日本における根管治療の成功率はどの程度でしょうか?
東京医科歯科大学むし歯外来では訪れた患者における、パノラマX線写真上の根尖部X線透過像の発現率が調査されました(1)。調査した歯において根尖部X線透過像が50%以上認められました。根尖部に透過像があることは根管治療が失敗したことを意味しています。
これらより、日本における根管治療の成功率は30~50%であるといえ、50%以上は失敗していることがわかります。
それでは、海外においての根管治療の成功率はどの程度あるのでしょうか?
Marquisらの研究によると(2)、術前の根尖部に病変が無い場合のinitial treatment(その歯にとって初めての根管治療処置)の成功率は93%と非常に高いものでした。海外における成功率の論文は数多くありますが、いずれも90%以上の高い成功率を示しています。日本の根管治療とは歴然とした差が生じています。
それでは、なぜ日本において根管治療の成功率は低いのでしょうか?根管治療の成功率にかかわる要因を術中・術後で挙げてみます。
術中の一因として、歯内療法の原則である無菌的処置が守られていないのが挙げられます。この無菌的処置にはラバーダム装着が必須となりますが、日本国内の一般歯科医師においてはわずか5.4%しか使用しておりません。歯内療法専門医でさえ25%程度しか使用しないことが分かっています(1)。このような無菌的処置を守らない根管治療は感染経路を拡大し、根管治療の失敗へと繋がります。
次に術後の要因を挙げてみます。根管充填が終了後には支台築造・クラウン(補綴物)における補綴処置を行います。これは、噛めるようにするだけでなく細菌の侵入を防ぎ、再感染を防止する役割があります。アメリカにおける研究データでは精度の高い根管治療だけでなく、精度の高い補綴物を装着することが必要であることが示唆されています(3)(4)。精度の低い補綴物では細菌の再感染により根管治療の術後の成功率に影響が出ると考えられています。
根管治療 | 補綴治療 | 成功率 |
---|---|---|
精密な治療 | 精密な治療 | 91.4% |
精密でない治療 | 精密な治療 | 67.6% |
精密な治療 | 精密でない治療 | 44.1% |
精密でない治療 | 精密でない治療 | 18.1% |
根管治療 | 補綴治療 | 成功率 |
---|---|---|
精密な治療 | 精密な治療 | 81% |
精密でない治療 | 精密な治療 | 56% |
精密な治療 | 精密でない治療 | 71% |
精密でない治療 | 精密でない治療 | 57% |
このように根管治療において高い成功率を求めるためには、徹底した無菌処置を行ったうえで精密な根管治療を行い、精度の高い補綴治療が必要とされます。
これらの条件を整えるためには、診療時間の確保、正しく滅菌処理された器具の準備(必要に応じて使い捨てによる器具の使用)、適切な薬品・材料の使用といった診療の環境の整備とコストがかかります。高い成功率を求める正しい根管治療を行うためには、このような条件を整える必要があります。
しかし、保険診療のみで対応しこれらの条件をクリアするのは非常に困難であり、残念ながら日本の根管治療の成功率を低くしている一因とも言えます。
<参考文献>
(1)須田英明.わが国における歯内療法の現状と課題.日歯内療誌.2011;32(1);1-10.
(2)Marquis VL,Dao T,Farzaneh M,Abitbol S,Friedman S. Treatment Outcome in endodontics;the Toront Study.PhaseⅢ;initial treatment.J Endod 2006;32(4);299-306.
(3)Ray HA,Trope M.Periapical status of endodonticaly treated teeth in relation to the technical quality of the root filling and the coronal restoration.In Endod J.1995;28:12-18.
(4)Tronstad L,Asbjornsen K,Doving L,Pedersen I,Eriksen HM.Influence of coronal restrations on the periapical health of endodontically treated teeth.Endod Dent Traumatol.2000;16:218-221.
費用
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注意点・リスク・副作用
・治療後に一時的に痛みが出る可能性があります。
・状態によっては根管治療により改善がみられなかったり、症状が再発したりすることがあります。
・治療を途中で中断すると再治療のリスクが高まりますので必ずご予約日にご来院ください。